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記者会見で自民党総裁選に出馬しない意向を表明した岸田文雄首相=2024年8月14日午前11時43分、首相官邸、岩下毅撮影

 岸田文雄首相の突然の記者会見には、正直いって驚いた。このコラムも実は、岸田氏への「退陣勧告」を書こうと思っていたのだが、あっさり先回りされたのだから、向こうが一枚上手(うわて)だった。こうして書き換える羽目になり、古手の政治記者として不明を恥じるほかない。

 退陣不可避と考えたのには理由がある。第一に、岸田氏が続投すれば、衆院選で「自民党は70議席減」との見方があった。自民は190議席前後になる数字である。公明党と合わせても衆院過半数の233議席には遠く及ばず、選挙後の引責辞任は必至だ。

 第二に、9月の総裁選の「勝ち筋」が見えなかった。現役の首相で総裁選に出て敗れたのは、「天の声にも変な声がある」という敗戦の弁を残した福田赳夫総裁だけ。今回、候補者の乱立が予想されるなか、裏金問題の責任もとらずに9月の総裁選に出るのは無謀だ。

 「お盆には進退の表明はしない」といううわさもあって、まさかあのタイミングとは思わなかった。帰省して墓参りをしていたのだから、甘かった。

 岸田氏は正体の見えないところがある。「聞く力」はどこへやら、唐突に「決める力」を発揮するので、まわりは右往左往させられる。

 私の頭にあったのは、ネットでは有名な二つの話である。

 ひとつは昨年3月、岸田氏が…

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